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What is Virgil Abloh? - 編集の時代

こんにちは、BXデザイン室 BXデザイン3チームのべ・ジファンです。今回はヴァージル・アブローというデザイナーについてご紹介します。
2018年度の『System Magazine』10号は、彼を”Who”ではなく”What”と表現しました。
ヴァージル・アブローはもはや一人のデザイナーではなく巨大な現象であり、時代の流れを示す指標と言えるでしょう。

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1.Mixmaster Virgil Abloh

ヴァージル・アブローの職業は一言の単語で定義し難いものです。現在最もよく知られているのはルイ・ヴィトンのメンズコレクションディレクターとしてのヴァージル・アブローですが、彼はファッションデザイナーである以前に建築家であり、カニエ・ウェストのクリエイティブ・コンサルタント、そしてDJなど様々な分野を自由に行き交う、いわゆる「Mixmaster」なのです。
彼は、イリノイ工科大学において土木工学の学士を取得、建築の修士号も持っているため建築と土木工学に基づいたファッションデザイナーと言うことができるでしょう。ファッションの学校で従来通りの教育を受けたデザイナーたちとは違って、彼の基盤には現代芸術と建築があり、ブランディングの観点から見た彼のクリエイティブは、何らかの作業の範疇を超えた一つの「行為」であるように見えます。
現在のクリエイティブは、その基準の感覚的な上限が無意味になる時代となりました。どこにも見られなかった新しいデザインというのが不可能に近いほど、あまりにも多くの、そしてあまりにもよく作られた創作物があふれる時代で、大衆の共感を得られるクリエイティブを生み出すことは容易ではありません。

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彼はいくつかのインタビューで「多様な経験と文化を基盤にして既存のデザインを再構築する」という言葉を使いますが、それは現代の創作に対して驚きを与える一つの解答だと思います。

2 .“The: Ten”

2017年“The: Ten”は、彼の編集者的な能力を発揮した代表的なプロジェクトで、デザイン/マーケティング/影響力の面で完璧に近い事例として挙げられます。

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プロジェクトを簡単に説明すると、ナイキの象徴的なスニーカー10種類を分解/解体して組み合わせ、ヴァージル・アブローならではの再解釈をするというプロジェクトです。単に解体して組み合わせるのではなく、建築で使われる建材のようにスニーカーを構成する要素自体に注目が集まりました。

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最も代表的で、以前高価なリセール価値を誇るエアジョーダン1では、ナイキのロゴの位置を変更しました。スニーカーのアイコンが一つの「キャンバス」になったのです。

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コンバースのチャックテイラーでは、実際に履いた時に靴下がどこに位置するのか直感的に分かるように透明素材の特性を生かし、靴下の色によって新しい靴に生まれ続けること、すなわち、靴そのものが一つの空間として意味を持つように構成しました。
各スニーカーがどんな機能を持っているかによって伝えるメッセージが異なりますが、共通していることは、ヴァージル・アブローのトレードマークであるエアには「AIR」、箱には「BOX」フォームには「FORM」など、構成要素に対する表記をHelvetica書体で刻むと同時に「スニーカーを構成するすべての構造を想起させ、これらの構造が新しい経験を作る」というメッセージを伝えようとしたことでしょう。
既存のものを解体して組み合わせ、蛍光オレンジ色のケーブルタイをつけたもの。
会社が追求する方向と趣向を損なわない絶妙なラインで創造ではなく再構築をしたのです。
マーケティングにおいてもオフラインとオンラインを自然に連結できるよう、世界各国のオフホワイトのアカウントは、「オンライン」でハッシュタグをリポストした消費者にだけ当選の機会を与え、該当都市の「オフライン」店舗でのみ購入できるという当選の特典をつけました。バイラルマーケティングに慣れた若い世代が数十、数十万ものリポストをし、大きな話題になりました。

3.文化と経験を盛り込む

オフライン店舗で買い物をすることも、少しずつなくなるかもしれません。ヴァージル・アブローの代表ブランドであるオフホワイトのウェブサイトでは、「How to」コーナーを通じてオフホワイトの服をどのように着るとよりよいスタイルで着こなせるかについてのガイドラインを提示しています。

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一般的なファッションブランドでは、どのようにベルトを締め、どのように紐を結ぶかについて教えていません。ここで重要なことは、このガイドラインに全面的に従えというのではなく、ただ基本だけ教えて、その後は消費者に任せるということです。

4. [What is Virgil Abloh?]

ヴァージル・アブローが、過大評価されたという意見も相当数あるのは確かです。 「皆が作り上げたものをベタベタ貼っただけ」という意見も後を絶ちません。しかし、古いパラダイムでは、彼を理解することはできないでしょう。正解というものがなくなり、主流と非主流の境界があいまいになる時代だからです。時代のパラダイムが変われば、時代と時代をつなぐ架け橋のような存在は光を発揮するでしょう。

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今、彼は建築、音楽、ファッションというジャンルを超えて美術館に向かっていいます。
シカゴ、アトランタを経て今年の冬、ニューヨークのブルックリンで「Figures of Speech」という展示が行われる予定です。
展示では2000以上のイラストレーションで埋められた500ページのモノグラフ、カニエ・ウェストのクリエイティブディレクター時代に新しく復活させたストリートファッションとビジュアルアート、オフホワイトのコレクション、ミース・ファン・デル・ローエからインスピレーションを受けた家具や靴のデザイン、そしてDJ作品まで、ヴァージル・アブローが過去20年間積み重ねてきたクリエイティブをひと目で見ることができます。

彼の終わりなき歩みは進行中であり、より果敢に文化と経験をミックスしながら再創造していくことでしょう。
日々急変している昨今、この時代において我々は自らを解体し再び組み立てることができなければならず、我々は誰もがMixmasterになれるということを自認しなければならないでしょう。




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