LINEギフトのブランドデザインを担当するContents Designチームのご紹介
LINEヤフーのコマース・メディアカンパニーでLINEギフトなどのブランド・ビジュアルデザインを担当しているContents Designチーム(以下、CDT)のJT(Choi Jungtae)です。
この記事では、CDTとLINEギフトというサービス、そしてそのデザイン事例についてお話しさせていただきます。
私の自己紹介とデザインに対する考えについて
私は韓国の弘益大学(Hongik University)でデザインを専攻し、その後、韓国のポータル企業NAVER(ネイバー)でUI/UXデザイナーとしてキャリアをスタートしました。その後、グローバル向けのサービスを提供していた現LINEヤフー株式会社へと移り、そこでグローバルマーケティングとブランディングに関連するブランドデザイン業務を継続して担当。現在は、LINEギフトとLINE NEWSというサービスのブランド・ビジュアルデザインを担当するCDTをリードしています。
私のデザイナーとしてのキャリアの中で特筆すべき点は、ビジネスに関連する経験も豊富に持っていることです。以前、LINEのFinTech系サービスの企画、事業運営、プロダクトマネジメントを3年間経験しました。その経験を生かし、現在はビジュアルデザインを中心に行う業務においても、ビジネスの視点を常に念頭に置いています。
ITサービスにおけるプロダクトデザインは、データに基づいたUXデザインとUIデザインが中心ですが、最近では多くのUIが標準化され、他のサービスとの差別化が難しくなっています。このような状況の中で、ユーザーにとって魅力的で注目を集めるビジュアルデザインの品質が非常に重要になってきていると感じています。そして、これらのデザインが積み重なって、ブランドのアイデンティティーを形成していくと考えています。
最終的には、このように調和のとれた美しいデザインを通して、サービスに対するユーザーの信頼を高め、ビジネスKPIへの貢献を目指してデザインに取り組んでいます。
モノづくりとサービスの本質について
一般的にビジュアルデザインの核となるものは、美学的な点にあるとされますが、ITサービスで特定の目的を持って使用される際には、いくつかの重要な点を考慮する必要があります。
まず最初に、ビジュアルは明確で理解しやすいものであるべきです。UIデザインにおいて機能美が重視されるように、ビジュアルデザインも情報を明瞭に伝達することが求められます。ユーザーはごく短い時間で、デザインが魅力的かつ理解しやすいかを判断します。そのため、複雑さを排除したクリアなビジュアルが基本でなければなりません。この文脈において、デザインのトーンやカラーをはっきりと区分けし、伝えるべき情報の優先順位に応じてビジュアルを段階的に構成することが重要です。
次に、ビジュアルの完成度が挙げられます。たとえレイアウトが美しく設計されていても、それが十分に魅力的でない場合、ビジュアルデザインの本来の価値は損なわれます。ビジュアルの完成度は、職人のモノづくりに似ています。
これら2つの要素は、情報をよりわかりやすく、かつ魅力的に伝えるというビジネス上の課題に直結しています。
CDTは事業部所属のブランドデザイン組織
LINEヤフーの各カンパニーは、サービスの成長とビジネス成果に注力しています。それに伴い、カンパニー内のデザイン組織もこれらの目標に沿って多様な要求に応えることが求められ、私たちCDTが制作するデザインも、ビジネス目標に連動する形で進められています。
成果を出すためには、事業部、商品部門、マーケティングチームといった各担当者との密接な連携が不可欠です。私たちは、具体的な数値目標からビジュアルトレンド、レファレンスに至るまで、事前に多くの情報を共有し、共通の理解をもってデザイン作業を進めています。
時にはデザインの自由度が制限されると感じることもありますが、ビジネスの文脈で考えれば、私たちはより本質的で目標に即したデザインを追求しているとも言えます。
デザインプロセス
プロジェクトやプロモーションでデザインが求められる際には、デザイン組織だけでなく、他の部署も巻き込んだ意見交換や認識合わせを行いながらプロジェクトを進めていきます。
CDTでは、基本的にプロジェクトごとに、デザイン案を3つ作り検討します。チーム内でコンペティション形式を取り入れることで、デザインの質を高めるとともに、メンバー間での相乗効果を生み出しています。デザインプロセスの全体的な流れは以下の通りです。
1.プロジェクトKICK OFF
プロジェクト開始時に、企画担当者からプロジェクトの概要、目標、対象となるターゲットについてのレビューを行い、認識を合わせます。
2.実務者同士GAP FILL
レビュー内容を基に、デザイナーと企画者がそれぞれの視点から再度ディスカッションを行います。この過程で、プロジェクトの目指すべき方向性と現状との間のギャップを減らしていきます。
3.コンセプトMAKING
チーム内の各デザイナーがそれぞれのコンセプトを決めて、3案程度の方向性を提案します。この段階では、実際のデザイン作業は行わず、ムードボードやレファレンスを用いてデザイナーの意図を明確にします。
4.デザイン要素SET
コンセプトとカラー、オブジェクトなどについて一定の合意を得られたら、実際のデザイン作業を開始します。ここからは、製品の完成度を高めていく工程に入ります。
5.段階的なREVIEW
ビジュアルの完成度が上げる過程で、事業部と2~3回のレビューを行います。合意された内容であっても、実際に形になる過程で新たなギャップが見つかる可能性があるためです。
6.ファイナルデザインSELECT
完成したデザイン案をもとに、企画チームや事業部メンバー、さらにはターゲット層に近い人々のアンケート調査を通じて、最終的なデザインを選びます。
7.協力&PLAY
これらのプロセスはチーム内のデザイナー間のコンペティションを通じて進行されますが、単なる競争ではなく、メンバーが互いにポジティブな影響を与え合い、相乗効果を生むよう努めています。メンバーはライバルではなく、プロジェクト成功のためのアドバイザーとしての役割を果たすと考えています。
LINEギフトについて
LINEギフトは、「LINE」アプリを通じて友だちとギフトを贈り合うことができるコミュニケーションサービスです。サービスリリース後に、急成長を遂げ、出店ショップ数は約1,500店舗(2023年11月時点)へと拡大し、取扱い商品数は約40万点となっています。特にクリスマスやバレンタインデーといった季節のイベントやコスメカテゴリーに強みを発揮し、コアユーザーである20〜30代女性との親和性が高く、一方で実際に店舗に入りにくい男性も気軽にコスメの贈り物ができる点で重宝されています。
デザイナーの紹介と担当事例について
LINEヤフーでは、デザイン組織では主に2つのカテゴリーに分かれています。1つは、各事業部が担当する特定のサービスに関わるデザイン組織、もう一方では、プロダクトやブランド、企業文化の形成に横断的に関わるDesign Executive Centerデザインです。一部例外はありますが、コーポレートブランディングを含むサービスのブランドデザインは、Design Executive Centerが担当し、一部の事業部では、その事業部が担当するサービスのブランドデザインを専門的に扱う部署も存在します。その中で、コマースカンパニーおよびメディアカンパニーのCDTはそのような専門部署の一例です。
このパートでは、上記のような組織背景や目的、プロセスに基づいて制作されたLINEギフトのデザイン事例を紹介します。特に、季節の一大イベントとしてのクリスマスやバレンタインデー、母の日・父の日のプロジェクトは、ビジネスとデザインの両面で優れた成果を挙げています。ここでは、これらのプロジェクトに取り組んだ3人のデザイナーが直面した課題や、プロジェクトを通じた彼らの考え方について掘り下げてみます。
キム・サンミ(Kim Sangmi)-クリスマス
WPPのLandor(ランドー)およびCrocs(クロックス)での勤務を経て、2022年に現LINEヤフー株式会社に入社しました。ブランディングを中心に、パッケージデザインやグラフィックデザインなど、多岐にわたるデザイン業務を経験してきました。これらの経験を活かし、現在はCDTに所属し、LINEギフトのデザインを担当しています。
私が特に記憶に残っているプロジェクトは、2023年のクリスマス特集です。その年のLINEギフトのクリスマス商戦では、1人のユーザーあたりの平均購買価格を年次比較で向上させることがミッションの1つでした。
私たちは、プチプレミアム感を出しつつも、特別感を必要としており、競合他社と差別化を図ることをデザインの一番の目標としていました。また、ギフトの特性を考慮し、商品群を一目で理解できるようにすることが課題でした。そのため、デパートのクリスマスショーウィンドーを眺めながらショッピングしているかのような感覚をオンラインでも味わえるよう、クリスマスショーウィンドーをコンセプトに選びました。
クリスマス特集が本格的にスタートする前のクリスマス限定コスメを紹介する「クリスマスコフレ特集」では、赤と金色を採用して豪華で華やかな印象を与え、クリスマスの雰囲気を演出しました。メインのクリスマス特集では、一般的な赤と緑の色合いではなく、金と白の組み合わせを用いて、LINEギフトならではの穏やかで温かみのあるクリスマスの雰囲気をユーザーに伝えるよう努めました。
全体的には金色のツリーを連想させるデザインとし、アクセントとしてリボンとオーナメントに赤色をポイントとして使用するスタイルで完成しました。タイトル部分ではリボンのスタイルを取り入れ、デザイン内の全ての要素が互いに関連付けられるように制作しました。これにより、ユーザーがタイトルから始まり、カテゴリー品目に至るまでの間、視線が自然と留まるような設計を心がけました。
ソン·ダウォン(Son Dawon)-バレンタインデー
韓国の弘益大学(Hongik University)でビジュアルコミュニケーションデザインを専攻し、その後、広告企画や映画美術プロダクションでのデザイン業務を経験し、日本に渡りました。2019年に現LINEヤフー株式会社に入社してからは、Global Brandingチームに所属し、LINEの8周年~10周年にかけてのプロジェクトを担当。さまざまな国のチームメンバーをまとめ、グローバルブランディング企画などを進行しました。現在はCDTの一員として、LINEギフトのデザインを手掛けています。
2024年のバレンタインデーを担当しました。今回の特徴は、バレンタインデーに特化した2つの特集があったことです。
1つは、大切なパートナーや普段からお世話になっている家族への感謝と愛情を表現するための本命チョコレート特集でした。もう1つは、日々の努力に対する自分へのご褒美としてのご褒美チョコレート特集です。
これら2つの特集がペアデザインとして調和するように制作しました。ロゴデザインには、高級感と愛らしさを兼ね備えたフレームとリボンを使用しました。特集の違いを際立たせるため、どちらの特集もチョコレートをテーブルに置き、光の演出を変えて変化をつけました。
ご褒美チョコレートには暗めのライティングを施し、チョコレートにスポットライトを当てるような演出を行いました。一方、メインのバレンタインデー特集ではワクワクする心情を表現するため、ぼやけた光の演出を用いました。さらに、チョコレートの形状にも違いを持たせ、LINEギフトの主要ターゲットである20代から30代に向けては、愛らしさを強調するハート型のチョコレートを選び、ご褒美チョコレートでは、やや年齢層が高いターゲットを意識してダークチョコレートやベリーを用いたデザインを試みました。
カラーパレットに関しては、バレンタインデーといえばピンク色が連想されますが、ホットピンクや薄いピンクなどさまざまな色合いが存在します。家族や友人、愛するパートナーへのプレゼントという温かな意図を伝えるために、イエローレッドを少し加えたピンク色を選びました。
Hyo(Feng Weier)-父の日
中国の上海応用技術大学(Shanghai Institute of Technology)でデザインを学び、その後日本の大学院でデザインを専攻しました。Bravis International(ブラビス・インターナショナル)でのパッケージデザイン経験を経て、大学院時代にはJPCAデザインアワードで優秀賞を受賞するなど、実績を積んできました。2022年に現LINEヤフー株式会社に入社し、現在はCDTの一員として、LINEギフトのシーズナルイベントにおけるキービジュアルデザインを主に担当しています。
父の日はLINEギフトの重要なイベントとして位置付けていますが、市場規模においては母の日ほどの高いポテンシャルは認められていません。そのため、父の日イベントにおけるGMV(※Gross Merchandise Value、流通取引総額の略)を最大化する方法を模索するという課題に直面していました。
お父さんに関するイメージは多様であるため、特定のイメージを作るよりも、【お父さんと一緒に食卓で食事をする】という共通のシーンをイメージ訴求の中心に据えることにしました。これにより、LINEギフトの商品ラインアップがユーザーのニーズに合致していることをビジュアルデザインを通じてアピールしています。
キービジュアル全体のカラートーンは、家庭の温もりを感じさせるブルーを基調とし、暖かみを加えるために黄色をアクセントカラーとして使用しました。父の日キャンペーンは商品を前面に出すものであったため、チームメンバーと協力して食卓上の商品を一つずつ丁寧に作成し、3Dイラストと全体の光と影が自然に見えるよう細部にまでこだわりました。
デザイナー募集中
以上が、コマース・メディアカンパニー傘下でサービスのブランド・ビジュアルデザインを手がけるCDTについての紹介です。私たちのチームは現在、ビジネスに貢献し、合理的でありながらも美しいビジュアルデザインを創出しています。私たちの業務や考え方・方向性に共感していただける方と、ぜひ一緒に働きたいと考えています。ご興味がありましたら、下記の採用ページから詳細をご確認ください。ともに、より美しく、本質的な価値のあるデザインを創造していきましょう。
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