デザイナーたちに新たな刺激と成長の機会を提供する社内講演「DEC/Class」(登壇:成田昌隆さん)レポート
こんにちは、デザイン統括本部・CX2チームのRisaです。私が所属するCX2チームでは、デザイナーが安心して仕事に集中できる環境を整え、彼らが最高のパフォーマンスを発揮できる組織作りを目指して、さまざまな組織課題の解決に取り組んでいます。その一環として、LINEヤフーに所属するデザイナーたちに、クリエイティブな分野だけでなく、多岐にわたる分野で活躍する方たちの講演を通じて、新たな刺激と成長の機会を提供する「DEC/Class」という社内プログラムを実施しています。
今回のnoteでは、LINEヤフーが合併後初めて開催した「DEC/Class」におけるルーカスフィルム/ILM所属 のCGモデラー、成田昌隆さんの講演の模様についてお伝えしたいと思います。
成田昌隆さんプロフィール:
ルーカスフィルム/ILM シニアCGモデラー。1963年生まれ、愛知県出身。名古屋大学工学部を卒業後、NECを経て日興證券へ転職。1993年から米国赴任。会社勤めのかたわらCGの独学を始め、米VFX業界への転身を決意し退職。専門学校を経て2009年、46歳にしてハリウッドのVFX業界にプロデビュー。メソッドスタジオにて『タイタンの逆襲』のモデリングスーパーバイザー、デジタルドメインにて『アイアンマン3』のリードモデラーなどを経て現職。『スター・ウォーズ』エピソード7-9ではミレニアム・ファルコンやスターデストロイヤーなどのCGモデリングを担当。
http://www.naritafamily.com/cgi.htm
成田さんはCGモデリングの分野で広く認知されたプロフェッショナルであり、自身の豊富な経験と知識から得られる洞察は、参加したデザイナーたちにとって大きな刺激となりました。講演では、幼少期から映画が好きだったというエピソード、クリエイティブな作業における挑戦や成長するための心構え、業界で求められるスキルについての貴重なアドバイスが共有されました。
その中でも印象的だったエピソードをご紹介します。
■証券会社時代に渡米するチャンスをつかむ!
もともとNECで衛星通信関連の技術職に就いていた成田さん。その後キャリアチェンジを図り、証券会社へ転職。証券会社ではIT部門に配属され、そこでの業務が評価され、シリコンバレーに新設される調査機関の立ち上げに関わるチャンスが!成田さんにとって技術と金融が交差する非常に革新的な分野であり、自身のスキルセットを拡張し、新しいビジネスの概念を学ぶ絶好の機会だと感じたそうです。さらに異文化間の交流を通じてグローバルな視野を広げ、個人的な成長を遂げる機会に。この経験は後に映画業界への転職という大きなキャリアの転換を促す重要な一歩となりました。
■挫折と再起
CG業界での成功は一夜にして得られたわけではなく、成田さんは、何度も挫折を経験しました。最初のデモリールが完成した時、成田さんは多くのスタジオに応募したそうですが、なかなか返事が来なかったとのこと。この時期は成田さんにとって非常に心苦しいものと語っておられましたが、決してあきらめませんでした。そしてついに、小さなプロジェクトからその才能を認められるようになり、徐々に大きなプロジェクトに関わるようになったそうです。
■家族との絆
成田さんのキャリアチェンジは、家族の支えがあってこそ可能でした。保証された仕事を辞めて、あてのない新しい仕事に挑戦するという決断は、家族の理解なくしてはできません。それは成田さんが日ごろ家族に見せてきた背中に家族が信頼を見出せたからこそ可能であったものです。何事にもやると決めたことへの情熱、覚悟、行動、徹底的にやってみるというストイックさが重要だと教えてくれました。
■ミレニアムファルコン制作の裏話
特に興味深いのは、ミレニアムファルコン(映画『スター・ウォーズ』シリーズに登場するハン・ソロを船長とした架空の宇宙船)の制作に関するエピソードです。
プロジェクトでは、過去の映画で使われた実物大セットやミニチュアの詳細をデジタルに変換することが大きな課題となっていたそうです。特に、どのバージョンをモデルの基礎とするかを選ぶことから、映画のタイムラインに合わせてデザインを更新するまで、非常に精密な作業が必要だったとのこと。
成田さんはこのプロジェクトでチームワークが非常に重要だったと強調し、複数のモデラーが協力して最新のCG技術を用い、映画のビジュアルエフェクトの品質を向上させた過程を詳しく語っていただきました。その結果、完成したミレニアムファルコンのモデルは映画内で重要な役割を果たし、世界中のファンから高評価を得たそうです。映画のリアルな世界を再現するための挑戦と、それを乗り越えるプロセスを、成田さんは熱心に話してくれました。
■CG業界での働き方
CG業界の仕事と聞くと、締め切りに追われる過酷な労働環境だと想像する方も少なくないと思いますが、成田さんによると実際はそうでもないようです。現在は週に2日だけオフィスに出社し、その他はリモートワークで、1日の労働時間は8時間に設定されているとのこと。モデラーとしての仕事はプロダクションの初期段階で行われるため、プロジェクト後半の繁忙期前には他の新しいプロジェクトに移動することが多いので、ほとんど残業が発生しないそうです。ハリウッド映画の制作では、予算が十分に確保されているため、無理なスケジュールが組まれることはなく、アーティストが健康的に働けるよう配慮が行われています。工程管理、予算管理、労務管理がシステマチックに行われているため、アーティストは自身でスケジュールを管理する必要がなく、与えられた仕事に集中できる環境が整っています。さらに、予期せぬ仕様変更が発生した際には、コーディネーターが必要な残業時間を指示し、大きな変更が必要な場合には追加のフリーランスのスタッフを投入することで対応しているとのこと。このように、既存のスタッフに過度な負担がかからないよう配慮されているため、アーティストはクリエイティブな仕事に専念できる環境が整っているのです。とても理想的ですね!
■夢追い人としてのインスピレーション
成田さんのお話からは、夢を追求することの価値や、新たな挑戦に踏み出す勇気が感じられ、夢を持つすべての人々や、新しい挑戦を考えている方々にとって、大きな刺激となりました。さらに、海外での経験や新しいことへの開放的な態度についても語られたため、グローバルな舞台で活躍するための貴重な学びとなり、多くの勇気を与えてくれました。成田さんの「人生は一度きり 悔いのないチャレンジをしよう!」というメッセージがとても心に響く内容でした。
成田さんについては著作「ミレニアム・ファルコンを作った男 45歳サラリーマン、「スター・ウォーズ」への道」にここでは伝えきれないほど濃厚なエピソードがたくさん書かれていますのでぜひご一読ください!
■質疑応答
講演の後で行われた社員からの質疑応答にも回答いただきましたので、その一部をここで共有します。
Q: 海外生活で難しいと感じた部分と克服のために努力された方法がございましたら、お伺いしたいと思います。
A:渡米は30歳の時だったんですが、それまで30年間自分が生きてきて、これが良し。これは悪しと信じてきた絶対的な価値観が崩れたことです。日本でよし悪しとされる価値観は世界から見れば、ほんの一つの考え方、在り方でしかない。自由とはなにか、幸福とは何か、時間とは何か、そのとらえ方が国、民族によって違うことに戸惑い、徐々に自分の人生観が変っていきました。変化を不服に思わず柔軟に受け入れるのが、海外生活の難局を乗り切るコツ。
Q:日本で働くことと海外で働くことの違いは感じますか?
A:日本のCG業界で働いたことはありませんが、証券会社での経験と比べると、やはり結果を重んじるか経過を重んじるかが決定的に違う。それは日本の会社は人を切ったりできないので、運命共同体として日ごろの行動を管理して人を育てようとするのに対して、アメリカでは働き方は基本任される。遊んでいて結果を出せなければ首になるだけ。自己責任がはっきりしている。
また、日本は運命共同体なので会社のために働くが、アメリカでは会社は自分が成長するための活用する場と思っている。よってステップアップで会社をすぐに代えるのが一般的。怠けていても首にならない世界と怠けていたらすぐに首になる世界、どちらが大変かは一目瞭然だが、私は後者に働き甲斐を見つけている。
Q:好きなこととやりたいことの違いは何ですか?好きなことを仕事にすると何が楽しいですか?
A:好きな事は消費活動でやりたいことはプロデュース作業と思います。自分は消費者側だけにまわる人生はいやだという信念が昔からありました。好きなことを仕事にすると自分が好きな事を提供する立場になることができると思います。それはやりがいを生むと思います
Q:内助の功という言葉がぴったりなほど、奥様との関係性が良好ですが、夫婦がうまくいく秘訣はありますか?
A:妻に勝ってもしょうがない。競うべき相手ではなく、守るべき相手であるとお互いが思えればいいのではないかと思います。
Q:対人関係で悩んだときはどうやって切り抜けていましたか?
A:自分のやるべきことに専念する。敢えて解決しようとせず、時間に任せる。
実施後に実施した社内アンケートでは
• 完結なプレゼンもわかりやすいが、今日の内容は自然でリアルでした。共感が多く温度感も伝わった気がします。自分の努力を見せるだけでは通用しない話、なぜこの仕事を担当できたのか
どうやって縁があったの、またアメリカの履歴書の話も面白苦興味深かったです。日本も本当の意味での実力主義になってほしいと思いました。
• 人柄が素敵だった。人としてかっこいい。時間や力の投資の仕方や、集中の仕方が天才的。
• 弊社も中堅社員が多くなってきたので、ロールモデルとして、とても参考になるお話でした。
• 成田さんの人生観や困難に直面した時のマインドセットなどとても参考になりました。最初は履歴書にかけることはないとおっしゃっていましたが、色々なキャリアや趣味などの経験を経て現在があると思い、何も無駄なことはないんだと感じました。
• 自分自身、映画が好きなのでネームバリューの高い映画に携わられている時の詳細が聞けて興奮しましたしクリエイティブな仕事をしているので刺激になりました!成田さんの紆余曲折しながらも好きを追求して子供の時の夢を実現にしていてすごくかっこいいなと思いました。最後の言葉で「選択に間違いはない」「またやり直せばいい」など成田さんの歩んできた人生そのものを知るとより心に響きました。
などの声が多数届き、成田さんの人生をリスペクト、自分のやりたいことを後押しされたというコメントが多く目立ちました。
この機会を通じて、デザイナーたちは日常業務を超えた新たな視点を得ることができ、自身の成長につながる貴重な学びを得ることができました。私たちは、このような刺激的な講演が、デザイナーたちの創造性と向上心を刺激し、彼らが今後も成長し続けるための一助となることを願っています。
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