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今さら聞けないペルソナの作り方〜効果的なペルソナの作り方、使い方〜 LINEヤフー・mediba・Goodpatch イベントレポート

こんにちは!リユース統括本部フリマ企画部デザインチームのデザイナーの田川です。私は普段、Yahoo!フリマ(旧:PayPayフリマ)のプロダクトデザインを担当しています。
誰にでも使いやすく、手軽に楽しんでいただける体験を提供できるよう、日々サービスの改善や新規機能開発に取り組んでいます。

この記事では2024年2月14日に開催した、「今さら聞けないペルソナの作り方〜効果的なペルソナの作り方、使い方」のイベントレポートをお届けします。

UXデザイナー・マネージャーとして活躍されている方々を登壇者に迎え、UXリサーチの現場のリアルな話をお伺いすべく「ペルソナを作るメリットや活用方法」をテーマに、LINEヤフー、mediba、Goodpatchの三社がLT形式(※)で発表を行いました。

(※)LT形式・・・短時間で行われるプレゼンテーションの形式であり、要点をまとめ、テーマに沿って自分の経験や知識を話すスタイル。

今回は、株式会社medibaからUXリサーチ領域をリードしながら、採用と育成に取り組まれている河井 恵理さん、Goodpatch Inc.からはUX組織の責任者として、インサイト/ユーザーリサーチ領域をリードされている秋野 比彩美さん、そしてLINEヤフーからは「Yahoo!フリマ」デザインマネージャーの渡邊が登壇し、司会は田川が担当しました。お三方の自己紹介の後、LTがスタートしました。



1.『ペルソナを"作る"ときのヒント』

LINEヤフー株式会社 渡邊 陽介

1人目の登壇者はUXリサーチャーとしてキャリアを積んだのち、2022年に弊社に入社、現在はUXリサーチ領域をリードしながら後進の育成に注力している渡邊でした。
活用できるペルソナを作るにはどうすべきか、よくある3つの困りごとから作成のコツを話しました。
「ペルソナの項目に何を設定すればいいかわからない」に対しては、ペルソナに設定すべき最低限の4つの要素(ユーザーゴール、名前、価値観、シナリオ)と他の項目は調査目的に対して臨機応変に設定することが大切と話していました。「われわれは何を明らかにし、どう活用するのか」の調査目的を具体的に定め忘れないことが失敗を防ぐことができるそうです。
「都合が良すぎるペルソナができてしまう」に対しては、分析でのユーザー分類の作業が重要と話していました。よりリアルで適切な粒度でペルソナを作るためには分類軸を3つ以上(20個くらい)まずは思いつく限り出していき、その複数軸すべてに被験者を並べていく方法のスペクトラムでの分類がおすすめだそうです。
「ペルソナが大量で出てきてしまう」に対しては、ユーザーゴールや価値観をベースにペルソナを分け、複数体運用する際は優先順位をつけることが大切と話していました。デモグラフィック情報ベースでペルソナを作成してしまうのは、よくある失敗例だそうです。

2.『ペルソナを"共有・理解する"時のヒント』

株式会社mediba 河井 恵理さん

2人目の登壇者は株式会社medibaでUXリサーチ領域をリードしながら、採用と育成に取り組まれている河井 恵理さん。ペルソナをクライアント・プロジェクトメンバーに共有・理解してもらうときにおける、マインドセットや工夫の仕方を交えてお話いただきました。

ペルソナのメリットはユーザーのゴール達成・課題解決のために、プロジェクトメンバーが同じ認識を持って、製品・サービス・施策の方向性を決めていけるようになること、と話されていました。目指すべきはプロジェクトに携わる全員が、この人ならこう言いそう、こう思いそうとペルソナに共感できる状態とのことでした。

共有する時はペルソナを作成した裏付けを示し、相手が理解しやすいよう見せ方と伝え方を工夫することが大切と話されていました。工夫の仕方としては、分析ステップのデータを見せて信用度を高めることや、共感マップやカスタマージャーニーマップなど目的に合わせてツールを使い分けること、ペルソナの名前の設定にもこだわる、といったことで理解&印象付けを強化するがあるそうです。また、プロジェクトの目的に立ち返り、次のアクションにバトンを繋げるため具体的な提言を行うこともペルソナを理解してもらうために重要とのことでした。

3.『ペルソナを活用したプロセス3選と好事例』

Goodpatch Inc. 秋野 比彩美さん

3人目の登壇者はGoodpatch Inc.でUX組織の責任者として、インサイト/ユーザーリサーチ領域をリードされている秋野 比彩美さん。
ペルソナを活用しているUXやUIデザインのプロセスについて、実際の事例を交えながらお話いただきました。
1つ目の活用の仕方は、「後続リサーチのリクルート条件にする」でした。ペルソナ作成時に使った軸を条件にして、それにどの程度当てはまる人か、といった視点をもとにリクルートしていくと、ペ ルソナに近い人に後続のリサーチを実施することができるそうです。
2つ目の活用の仕方は新規事業立ち上げの時によく使われるプロセス「構造化シナリオの主人公にする」でした。ペルソナをもとにした行動シナリオからオブジェクトの抽出を行えば、ユーザーのモチベーションの根源に基づく仕様設計が可能になると話されていました。
3つ目の活用の仕方は「機能の優先度をペルソナを軸に判断する」でした。大規模な新規開発だけでなく、細かな改善においても実はペルソナを軸に機能を実装すべきか否か判断できるそうです。「これがないと結局他のサービスに乗り換えられてしまいます!」と言い続けてチームの意識をペルソナに引き戻すのがUXデザイナーの仕事のひとつと話されてしました。
実際のクライアントとの事例も多数紹介されていて、明日からでもすぐに活用できそう!と思える内容でした。

Q&Aセッション

お三方のLT終了後、会場の皆さんから募集した質問へ登壇者の方が回答するQ&Aセッションを行いました。

渡邊: 一番はユーザビリティテストをすることだと思います。ユーザーが実際に使って、「ここが使いづらいです」などユーザー視点で指摘してくれたり、プロダクト関係者が想定した通りには全然使ってくれない様子を意思決定者に見せることでユーザーの話を聞くのは大事だなと改めて理解が生まれることは結構あります。

河井さん: サービスが変化したり、ユーザー層が変わればペルソナも変わると思っています。ただし、根幹のサービス価値やペルソナが⼤事にするところを変えてしまうと、まったく別のサービスに変わってしまうのでそこは残しつつ、今のサービスやユーザーの状態に合わせてアップデートしています。頻度はまちまちですが、弊社が担当するあるサービスでは、少なくとも年1回はヘビーユーザーとライトユーザーのリサーチをして、既存ペルソナのアップデートをしたり、ユーザー層が大きく変わっていたら新たなペルソナを作って運⽤しています。

秋野さん:調査目的の話に尽きますが、マーケティング部や経営層にどういう説明をしたいのかを考えた時に、ペルソナが必要であれば経営層にも浸透させる必要があります。経営の観点で誰のどんな課題を解決するためにそのサービスをやってるのかを把握しておくことは大切ですよね。その情報がペルソナに記載されているのであれば、経営者の方にも納得いただく必要があると思います。

秋野さん:短いサイクルの中でも丁寧な調査をやった方がいいというのが結論かなと思います。似たような話で「転職したいけどポートフォリオを作る時間がない」という人はたくさんいますが、実際は時間はいっぱいあるんですよね。それはポートフォリオを作る時間を自分の生活の中で優先度を上げられないことが原因だと思います。UIデザインに時間が取られてリサーチにかける時間がないという話もあります。重要だなと思う気持ちがあれば、実行に移すと思うので自分の中の弱い気持ちと向きあって、UXリサーチにきちんと取り組めばいいかなと思います。

渡邊さん:大きい要素としてペルソナに近しい人のボリュームが基準になるかなと思います。ペルソナ1、2と2パターン出てきた場合など「それぞれのペルソナに近い人って市場にどれぐらいいるんだっけ?」と差を比較したりとか。そのほか想定しているプロダクトや今後の戦略で提供していく解決策がどちらの方が深く刺さるのか?という視点でも優先順位を調整します。同じ解決策がペルソナ1の方が深く刺さるとか、ペルソナ2の方が少し軽いみたいな。
秋野さん:結局サービスは誰か1人に刺さったところで、それが10⼈でオッケーです!な事業ならいいんですけどそっからクローズさせていく必要がありますよね。グロースはすべてを⾃分たちの組織でやらなきゃいけないと思っちゃうところなんですが、全然そんなことはなくって。なるべく使っているユーザー自身に広めてもらうことも大切だと思います。そこで、広めてくれるユーザーって誰なんだっけ?って考えた時にあの⼀番広めてくれる⼈をプライマリペルソナにしていくというのも1つの手段だと思います。

渡邊: スライドの最後にあった「理想のペルソナは漫画のキャラクター!?」の話ですね。昔動画で見た話ですが、ペルソナシート1枚の情報ってたかがしれているじゃないですか。
書かれているのと違うシチュエーションがあった時に、ペルソナがどういう行動をするかイメージできるかが大事ですね。漫画のキャラクターってどういうのが好きか、わかりやすく設定してありますよね。例えば漫画『ワンピース』のルフィーが喜ぶお店を作ろうと思ったらだいたいイメージができるかと思います。骨付き肉が大きいと喜ぶだろうなぁとか。実際にプロダクトで運用するペルソナを漫画のキャラクターから拝借することはないと思いますが。
上記にもあるように、あくまでわかりやすい存在として漫画のキャラクターのように状況が変わっても行動や思考をイメージできるペルソナが理想だよねという話なので、現実にいるユーザーからペルソナは作るべきです。
違うシチュエーションでどういう行動をしても、その時のペルソナの気持ちになれるというのが理想の状態かなと思っていて。漫画のキャラクターぐらいキャラクター性を持たせるというのが理想かな。繰り返し調査をして、肉付けをしていき、解像度を上げるというのが大事かなと思っています。

最後に

イベント後の相談会でも活発に意見交換が行われていました。異なる3社のUXリサーチを率いる方のリアルなお話を聞いて、刺激的なイベントになったのではないかと思います。

さまざまな課題解決のアプローチが網羅されているため、UXリサーチャーもしくはこれからUXリサーチャー予定の方はぜひこの記事を参考にしていただければと思います。

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