VFXで作った仮想世界が楽しめるThe Chemical BrothersのMV5選
こんにちは。Production Design TeamのMinjungです。
最近の映像制作では、デジタル技術とコンピュータグラフィック(CG)に基づく Visual Effect(VFX)を利用した制作が活発に行われています。 多くの映画がVFXを積極的に活用し、今では実際のセットを作らなくても空想上の都市を建設したり、仮想のキャラクターを創造して出演させるなど、ますます幅広い分野で多様なものが制作されています。
今回は、VFXを使って現実感のある仮想世界を作った映像をご用意しました。
ミュージックビデオの独特な雰囲気と幻想的な映像で注目されるイギリス マンチェスター出身のエレクトロニックデュオ 、The Chemical Brothers。時代に合わせてトレンドが反映されている彼らのミュージックビデオの中でVFXが使われた映像5編をピックアップし、時代別に映像の中で仮想キャラクターをどのようにリアルに具現化したのかを紹介いたします。
1. Get Yourself High
・Released: 2003
・Director: Joseph Kahn
彼らは19年前にすでに、モーションキャプチャーを使用してディープフェイク形式の映像を制作しました。 韓国系アメリカ人ディレクターのJoseph Kahnがこのミュージックビデオ制作の監督を担当しましたが、飛行機で移動中にノートパソコンで映画「少林拳対武当拳 (Two Champions Of Shaolin,1980)*」の映像を編集して、MVを完成させたそうです。 香港の俳優たちの口の形はモーションキャプチャー技術で表現し、レコードやマイクのような小道具は編集して合成しました。
*原作「少林拳対武当拳」(Two Champions Of Shaolin)は少林寺時代のチャン・チェ張徹 Chang Cheh 監督の代表作であるアクション映画です。
2. Salmon Dance
・Released: 2007
・Directors: Dom and Nic
15年前の作品ですが、独特の設定で面白い映像が作られました。 このムービーは後で紹介するWide Openや Free YourselfでもディレクションをしたDom&Nickが演出し、Framestore社と一緒に制作した作品です。 水槽の中で様々な魚たちが歌って踊るという独特なコンセプトのミュージックビデオで、2007年MTVヨーロッパミュージックビデオ部門候補にも選出されました。 Framestore社の3Dチームは、Maya(3DCGソフトウェア)を使用して実際の魚をモデルに約320匹を作り出す作業を6週間かけて行ったそうです。 自分たちが創造したキャラクターがアニメーションや擬人化されたキャラクターではなく、魚そのものに見えるように演出しました。特殊効果を最大化するために、水槽のある部屋の照明を意図的に暗くするという演出も加わっているそうです。
映像の最後に出てくる水槽内のダイバーの人形が The Chemical Brothers の姿であることも面白いポイントです。
3. Wide Open
・Released: 2015
・Directors: Dom and Nic
The Chemical Brothers の音楽とBeckのボーカル、Dom&Nickの演出と水野ソノヤ*のダンスが結合して芸術的なチームワークを生み出した映像です。 The Mill社の3DVFXチームと共同で作業し、ダンサーの体が網のような透明な体に変わるCGビジュアル効果を完璧に表現しました。VFXチームが直接制作したメイキング映像では、どのように実写とグラフィックを精巧に組み合わせて再現したのかを確認することができます。
*水野ソノヤは日本で生まれイギリスで育ったモデル兼バレリーナで、映画「Ex Machina」で魅力的なアンドロイドメイド「京子(Kyoko)」を演じましたました。
4. Free Yourself
・Released: 2019
・Directors: Dom and Nic
「AIが音楽とダンスに初めて接すると、人々と異なる反応をするだろうか?」というコンセプトで制作されたこのビデオは、ロボットが人間のようにパーティーを行うというストーリーです。 先に紹介したWide OpenのThe Mill社の3DVFXチームとともに8ヶ月間作業し、ロボットの中にはThe Chemical Brothersの姿をしたロボットも登場します。
5. We’ve Got to Try
・Released: 2019
・Director: Ninian Doff
ロケットの試験用生命体に選ばれた犬が宇宙飛行士として訓練する内容のミュージックビデオで、スプートニク2号のライカを思わせるムービーです。よく訓練された犬とF1、グリーンバックの撮影など様々な要素と特殊効果で、面白い映像が作られました。短いランニングタイムですが、犬の優れた演技力と面白いストーリーが合わさって緊張感と同時に笑いを与える、一本の映画のような映像です。メイキングビデオでは映像の撮影過程を監督の説明とともに確認することができます。 メイキングで見られる平然とした犬の姿には、思わず感心してしまいます。
最後に
The Chemical Brothersの表現は、サウンドだけでなく、それと融合したデザインも重要な要素として作用しています。 目に見えないサウンドを完璧に、もしくはそれ以上に視覚化した独特な方法で新しい芸術を創造していると思います。
時代に応じて多様な分野の専門家たちと最新技術、そして強力なデザインが結集し幻想的なパフォーマンスを披露するThe Chemical Brothers。このグループの次の作品ではどんな技術とデザインが見られるか、期待して待ちましょう!