LINE UI Designコースのサマーインターンに参加して
はじめまして。
LINEインターン2021・UI Designコースに参加させていただきました、鈴木 稜(@inovel_ryo )です。
このnoteでは、LINEのインターンに参加するまでの経緯、インターン期間中に行ったことや学んだことについて書いていきたいと思います。
インターンに参加するまで
僕は総合大学の理系学部に所属しており、大学ではUIデザインではなく人間工学や金融工学などを学んでいます。UIデザインや物の使いやすさには以前から興味を持っていたものの、それに挑戦するわけではない状況が続き、気づいたら大学3年の4月になっていました。
企業の人事の方とお話する中で「就活する上で未経験のままでは厳しい」という言葉を数多くいただきながら、しかしデザインに挑戦することのないまま1ヶ月ほどが経った時、LINEのUIDesignコースのインターン説明会がありました。その中でBiz Designチームの齋藤さんがおっしゃっていた言葉が、とても印象に残っています。
それは「独学で大丈夫!!」 という言葉です。実際は強くは言われていないですし、未経験でも大丈夫という意味でもなかったと思います。しかし、当時の僕には「これをきっかけに始めてみな!」と聞こえました。拡大解釈してしまいましたがこの言葉にはとても励まされ、説明会の翌日には初めてReDesigner for StudentのUI Challengeに挑戦して重い一歩を踏み出すことができました。インターンの選考課題もなんとか作り終えることができ、面接を経て、合格の電話を受け取りました。
課題設定の難しさ
合格後、インターンでは「LINEサービスの2年後、3年後の姿を考える」というテーマに取り組んでもらうと伝えられました。キャッシュレス社会の実現に興味があった僕がインターン開始に先立った顔合わせの会で提案したのは、金融系のサービスです。LINEから直接口座のお金を送れたり、LINEのトークグループ内で自動で割り勘や振込を行えたりできる、LINE Payの基盤となるような銀行サービスを想定していました。しかし、インパクトに欠ける、現存するアプリの良い部分の詰め合わせに見えるなどの理由で、インターン開始までに再提案をすることになってしまいました。
インターンが始まってすらいないのに遅れをとってしまったことに大きな焦りを感じ、顔合わせの会の後も他のアイデアを思いつくことができないまま一週間が経過してしまいました。しかし、LINEアカウントは基本的に一人ひとつしかを持てないという点に気づいたことがきっかけになり、LINEを身分証のように扱うことで行政や医療などの公的サービスにアプローチできないかとぼんやり考えるようになりました。
LINEで行政手続きができたら便利じゃないか、選挙ができたら投票率が上がるんじゃないか、どの病院でもカルテを共有できれば患者も医者も重宝するのではないか。クリエイティブ戦略チームのGOさんに相談したところ、アイデアの風呂敷は広げて考えてから閉じていく方が良いというアドバイスも頂いたので、友人に手続きなどの不満を聞いたりアプリのベンチマークを取ったりして、徐々に方向性を固めていきました。
しかし実際にインターンが始まると、今度は実現可能性の壁にぶつかります。保険証や診察券などをLINEに取り込める形にしようとしていたのですが、ICチップ入りの物もあれば磁気ストライプ付きの物もあるカードをどうやって取り込むのか、法律やセキュリティの部分はどうするのかなど、UI以外の部分で考えなければいけないことが数多くありました。課題ごと変えたくなってしまうほど障壁が多いように感じてしまい、再度GOさんに相談しました。あくまで未来のサービスだからそのあたりの課題は解決された前提で作って良いと言っていただきましたが、結局1週目は仕様を考える部分に多くの時間を取られてしまいました。
デザインを学ぶために来たのにデザインに入る前から二度も大きな壁にぶつかってしまい、インターンの立ち上がりはとても順調と言えるものではありませんでした。LINEのデザイナーには企画力も求めているから課題も自由に考えてもらったと後日聞きましたが、企画を考えているこの期間が3週間の中で一番苦しかった時期であり、自分の企画力の無さや課題設定の難しさを痛感することになりました。
デザインの進め方
デザインツールはFigmaを使い、サービスにどんな機能を載せたいのか、そのためにどんな画面が必要なのかを考えながらデザインを進めていきました。
最初にしたことは、決済サービスや医療系などの関連しそうなアプリのベンチマークを大量に貼ることです。実際にあるアプリだけでなく、DribbbleやBehanceなどからインスピレーションをもらうこともありました。メンターの鹿熊さんには僕が知らなかったサービスを教えていただいたり、カードを取り込む部分には名刺管理系のサービスを見ると良いかもとアドバイスをしていただきました。それらから使えそうなデザインを切り貼りしたり真似したりしながらイメージを作っていきましたが、ワイヤーフレームをほとんど引いていないので、進め方としてはあまり良くなかったかもしれません。
2週目と3週目は各画面の中で必要な要素と不要な要素を再度整理し、配置を考えていきました。考えていたサービスは保険証や診察券などのカードの機能を取り込むものでしたが、情報の優先度や親しみやすさの観点からカードの形は残しておきたかったので、必要な要素を確実かつきれいに載せる方法を模索するのに多くの時間をかけました。
デザインするにあたっては、LINEのデザインシステムをFigmaで使わせていただきました。そのためフォントや色などのスタイルから、ボタンやアイコンなどのコンポーネント、さらにはイラストまで、LINEですでに作られたものをお借りすることができました。デザインガイドラインも参照させていただけたので、普段より効率的にデザイン制作を進められたのではないかと思います。
発表した成果物
僕は最終的に、マイナンバーカードとLINEを連携して行政手続きをLINEで行える、my IDというサービスを提案しました。このサービスを使うことで、コンビニでの証明書の発行や転居届・婚姻届などの届け出、診察券や免許証などの取り込みをLINEでできるようになります。家族のLINEと連携させることで家族の分の届け出も同時に出せるようにしたり、届け出の受理や病院の予約などを公式アカウントで通知してくれたり、LINEというプラットフォームの利点を活かせるサービスにすることを心がけました。
デザインでは様々なパターンの色を試し、LINE Forest Greenという見慣れたあの緑色から明るいオレンジ色に変更しました。手続き画面のボタンを大きめにしたこともあり、行政や医療の堅いイメージを持たせず使いやすさをアピールできたのではないかと思います。
充実したプログラム
3週間のインターンは全てオンラインで行われましたが、課題に取り組む合間にたくさんのイベントがありました。
初日にはオリエンテーションとしてクリエイティブ戦略チームのkennyさんが、LINEのバリューやミッション、インターンに参加する上での心得などをクイズ形式で楽しく教えてくださりました。GOさんはポートフォリオ勉強会を開いてくださり、ポートフォリオを見る上でLINEのデザインマネージャーが大切にしているポイントや、過去の新卒社員のポートフォリオの良かった部分を教えてくださりました。さらに同じくクリエイティブ戦略チームのmomoさんはライティング講座を開講してくださり、おろそかにしてしまいがちなUI上の文章の書き方の基礎や技法を学ぶことができました。どれも外部に向けて開かれていないイベントで、とても贅沢に学ばせていただきました。
また、クリエイティブセンターのセンター長のSunkwanさんやLINE最高戦略・マーケティング責任者の舛田さんとの交流会もありました。交流会は、事前にインターン生が用意した質問に30分ほどZoomで答えてくださる形式でした。これほど重役の方が学生の質問に答えてくださる機会は貴重だと思い、たくさん質問を用意したのですが、そのほとんどの質問に答えていただき、LINEやクリエイティブセンターが目指す未来について(少しですが)理解することができました。お忙しい中にもかかわらず交流会の時間を延長してくださったり、答えきれなかった質問に後日文章で回答してくださったり、とても丁寧で親しみやすい方々でした。
他にも新入社員の方やBXデザイナーとの座談会があり、オンラインでありながらも常に近くで社員の方のお話を聞いている、そんな3週間を過ごすことができました。僕の中で印象深いのは、これらのイベント全てが明るい雰囲気で行われていたということです。社員の方が普段からリラックスして働けていること、それができる環境が用意されていることが画面越しにも伝わってきて、改めて素敵な会社だと感じることができました。
たくさんのフィードバック
3週間のインターンの中では、フィードバックを頂く機会がとてもたくさんありました。メンターである鹿熊さんは、通常業務もある中で毎日2回のミーティングの時間を確保してくださいました。足りないところや変えるべきところを常に意識しながら作業することができたのは、毎日頻繁に話すことができていたからだと思います。初日に厳しいフィードバックをお願いしますと伝えていたこともあって、本当にたくさんのフィードバックを頂くことができたと感じています。
また毎週水曜日には、他のインターン生のメンターさんやクリエイティブ戦略チームの方々に進捗を報告する週次共有会もありました。そこではデザインについてではなく、取り組んでいるサービスの全体像や発表する時の伝え方などについて主にフィードバックを頂きました。第三者から頂くフィードバックは、いつの間にか自分で気づけなくなっていた部分についての指摘が多く、そのたびにサービスの根本的なあり方について考え直すことができたように思います。また週次共有会では前回からの1週間での成長を褒められることもあり、毎回励みになっていました。
インターン生それぞれで考えたサービスは違いましたが、最終日の成果発表会には、それぞれのサービスに近いLINEの事業を担当しているチーム長の方々が来てくださいました。僕たちは一つのアイデアとして頭の中にあるサービスを形にしましたが、それを実現できるかどうか、どう運営していくかの観点からもフィードバックを頂くことができました。my IDに対しては、コンテンツサービスプラットフォーム企画室長の浅井さん、Wallet事業室長の山崎さんのお二方が、LINEで今後実際にやっていきたいというコメントをしてくださいました。コメント自体も嬉しかったのですが、学生のアイデアに真剣に向き合ってくれている点にとても感動しました。
学んだこと
3週間の中で学んだことは数え切れないほどあるのですが、学んだことで一番大きかったのはプロは常に手を動かしているという点でした。
メンターさんとのミーティングの中では、僕が良いデザインを思いつかなかったところをFigma上で一緒に作ってくださることがありました。僕はパターンを頭で考えて行き詰まってしまうことが多いのですが、メンターさんは要素の配置やボタンの色、フォントサイズなどをノンストップで変え続け、できた様々なパターンを見ながらさらに調整を重ねていました。
当たり前に聞こえてしまっていると思いますが、調整の速度が自分の5倍は速いんじゃないかと思うほど、その速さに衝撃を受けました。その速さに気づいてからできる限り考えるより先に手を動かすように意識していますが、1.5倍ほどしか速くなっていないような気がしています。今後の自分にとって大きな課題であり、くせにしていかなければいけない部分だと感じました。
またLINEで働く一人のデザイナーとして、LINEの掲げるミッションやビジョンがメンターさんに染みついているのだとも感じました。僕は成果発表会に向けて作ったスライドで、my IDというサービスがミッションやバリューに如何に沿っているかについても伝えたいと考えていました。しかしスライドを作っていてかけられたのは、「そんなの当たり前だから強調しなくていいよ」という言葉でした。
企業理念を見てから就活をした方が良いよ、とは言われますが、僕はその重要性をあまり理解していませんでした。LINEの社員一人ひとりが企業理念達成のために働き、それらを実現できるサービスを作る。自身の認識の甘さを恥じると同時に、それが浸透しているLINEという企業の素晴らしさを感じることができました。
初めてできたデザイナーの友達
僕がこのインターンについて話す上で、同じコースに参加したピョンチャンとミリオンの存在は欠かせません。僕は総合大学に所属しており独学でデザインをしてきたので、デザインについて話せる友達が周囲に一人もいませんでした。そんな中、美大で実際にUIについて学んでいるピョンチャン、同じように独学で勉強してきたミリオンと親しくなれたことはとても嬉しい出来事でした。
インターン期間中はライバルでもあったため、イベント前の雑談や週次共有回で二人の進捗や完成度を知って、毎回焦っていました。それでも3週間最後まで完走することができたのは、励まし合いながら切磋琢磨できる二人がいてくれたからだと感じています。対面で会えなかったことが本当に残念ですが、いつかLINEのオフィスで直接会えたらいいなと思います。絶対に会おうね!
最後に
UIデザインを)3週間という長い期間をかけて、LINEを始めとした社会への影響力が大きいサービスに携わるデザイナーの方々から教えていただける
これは僕がESに書いた、LINEのインターンの志望動機の一部です。参加する前からとんでもない機会だとは思っていましたが、いざ参加してみると想像を遥かに超えて充実していて、そしてとても貴重な時間でした。3週間という期間は僕の知る限りサマーインターンの中では最長です。長さとしては十分すぎるはずなのに、充実しすぎていて、最後は短いとすら感じていました。
僕はこのインターンを通して、未経験の状態から確実に進歩しました。そして何より、デザインすることが楽しい、好きだと心から感じることができました。デザインに対しての自信は未だにありませんが、将来この道に進むために手を動かし続けたいと思います。
最後になりますが、このインターンのために何ヶ月も前から準備・奔走してくださった方々、インターン中に関わってくださった方々、メンターの鹿熊さん、そしてピョンチャンとミリオン、本当にありがとうございました。