日本最大級のデザインカンファレンス「Designship 2019」参加レポート
11/23、24に東京国際フォーラムにて開催された日本最大級のデザインカンファレンス「Designship 2019」に、クリエイティブセンターのデザイナーが多数参加しました。
そこで、参加したデザイナーたちそれぞれの感想を抜粋し、3つのカテゴリに分けてまとめましたのでご覧ください。
1.セッションについて
全体
story floorでのセッションは正面に3枚の大画面があってスライドと登壇者を映す形になっており、遠目からでも見やすく、座席の配置もよく考えられていて、プレゼン中はステージ以外は暗転し参加者も静かに聞いているためプレゼンに集中できる環境が作られていた。
コラボセッションでは普段は関わりの少ないプロダクトデザインや医療デザインなど異分野の話が聞けたのが大変興味深かった。どのセッションも今後デザインしていく上でのマインドセットが議題に組み込まれており、総じて自分の領域を開拓していくことが求められていると感じた。
オープニング
広野萌さんのデザインに対する熱量がすごかった。『物語の力で「デザイン」の壁を越える』というテーマは、デザイン自体のことも、これからの事業や経営の在り方、さらには働き方や生き方にも的を得ていて、非常に納得できた。
畠山 糧与さん:「日常」を拡張するAIとデザインの話
医療という私達の生活に欠かせない分野にも関わらずまだまだデザインによる課題解決が介入できていない、まさに「壁」の向こう側で闘っている話で非常に興味深かった。AIのブラックボックス問題(AIの導き出した答えに対して、人がなぜその答えに行き着いたのかを理解できず信用できない、という問題)は、非熟練医師が頭の中で診断をマップ化できていないことに似ている。AIも人も完璧ではなく、解釈性が違うということに着目してプロダクト開発を行うということに感銘を受けた。
西澤 明洋さん:ブランディングデザインのはじめかた -デザインと経営の新しい関係-
デザイナーの技術云々ではなく、どこで、誰に、何を、どうやって伝えるかその「伝える」という技を見た気がした。ほんの20分程度のスピーチで、大きな画面に出るのはほとんど1~2行のテキストか1~2枚の写真だったにも関わらず、一語一句聞き漏らしてはいけないような感じがした。
デザイナーにいま必要なものは経営リテラシー、経営者に必要なものはデザインリテラシーと話していて、まったくもってその通りだと思った。目の前にある課題を解決するだけじゃなくて、その前後にあるストーリーと自分が立てるべき分岐点=ソリューションを想像できるかが、これからのデザイナーには必要だと思う。西澤氏の本はブランドデザインのデザイナー全員に読んで欲しい。
田久保 善彦さん × 田川 欣哉さん:『イノベーションとデザイン』
デザイナー・エンジニア関わらず、他の領域に越境していくビジネスパーソンについて、が主な内容。結論としては、まず自分の分野でプロフェッショナルになった上で、別分野へ徐々に越境していき、スキルの棒グラフをたくさん増やして最終的に面にする、という話が非常に印象的でした。
北村 崇さん:“世界初”を支えるデザイナーが考えること
ブランディングにおける、プロダクトに対するストーリー作りの大切さを、非常にシンプルにプレゼンテーションされてた。イラストを使ってラフなスタイルでお話されていてわかりやすかった。
宇野 雄さん:月間5,400万人を支えるユーザ体験への想いとその現実
「お節介なデザイン」と「優しいデザイン」の違いを図解で示されていたのが印象的でした。すぐにでもデザイン実務に使える考え方をシェアいただけたことが嬉しかった。
ウジ トモコさん:共創デザイン(和の心)で創る、ブランド戦略
日本の文化と絡めて、参加型のブランディング戦略のお話をされていた。参加・体験できるだけで印象に残りやすいことはわかったが、最近は同様の戦略も増えているので、今後どのように他社サービスと差別化していくかも重要だと感じた。
有馬 トモユキさん:コンテンツを(もっと、よく)デザインしたい
とても話に入りやすく、面白かった。ロゴやデザインだけでブランディングをするのではなく書体や色などのスタイルガイドを作ることによって、誰が作ってもプロジェクトやブランドの全体的な印象が揃うという考え方の部分が、LINEのクリエイティブと通ずる部分があると感じた。
福岡 由夏さん:自身の弱みを武器にしたソーシャルイノベーション
吃音症に悩まされてきた同氏が、吃音症が体験できるデバイスや、吃音症で面接が通らない人の為にVRでセラピーを受けたり面接の練習が出来るソフトウェアを開発した事例を紹介したセッション。
同氏は「自分と身の周りの人を幸せにしたいという思いがより良い社会を作る第一歩」と話す。自身の弱みからモチベーションを得ているところが彼女にしか出来ない「自分と社会のデザインにおける関わり方」であり、他者視点ではなくどれだけ社会の問題を自分事に出来るかということが一個人がデザイナーとして社会に貢献する為に必要なことではないかと感じた。
弱みや悩みから社会に貢献する意義や目標を見出すことで自分ならではの軸を作る方法もあると気付かされ、とても有意義な機会となった。
コラボセッション:買う体験の変化とこれから
セッション内では、それぞれのスピーカーが属する企業の立場から今後の買い物に関する展望を発表しており、その中でも「一昔前は気軽にECで買い物をするなんて考えられなかったが、今ではECが日常の一部になっている」という言葉が心に残った。常に流動的に状況が変化していくインターネット業界においてデザイナーは日頃から変化に敏感に反応し、より良い物を作ること、よりユーザーに素晴らしい体験を提供することを念頭に置いておかなければいけないと再認識する良い機会となった。
2.原研哉さんのセッション「日本について」
意味をもたせた物体を置くことで作るデザインと、物体はなくとも想像力をかき立てて意味を感じさせるデザイン。より日本らしさを感じるのは後者、というような、日本らしいデザインとは何か、”何もない”が”ある”空間が作り出す意味や役割についてなど、デザインの根本から考えてみる時間となった。
余分なものを削ぎ落として洗練されたデザインを作っていく作業や、日本らしいデザインを作っていく点においては自社コンテンツのデザインにも通じるものがあると感じた。日本の独自性についても考える良いきっかけとなった。
原研哉氏の「Emptiness(空っぽ)」というデザインの考え方は初見にも関わらず、日本人として非常に浸透しやすい概念だった。ただその後にさらりと言った「頭2つ抜きん出るこだわり」というなかなかデザイナーが実現できないところができるのが、原研哉さんたる所以だなと思った。
global - localといタイトルで日本の歴史や神話で例えたストーリーからはじまり、シンプル・ミニマム・現在の無印のデザインについて等、全てが私にとって価値のある内容で素敵な時間を過ごせた。常に新しいことを考えている方なんだなと改めて実感、とても良い時間を過ごせた。
日本の古くからある考え方や学問をデザインに結びつけていく過程が面白い
3.出展ブースについて
入社してからずっとLINEでやっているサービスが最高のサービスだと自負していたが、他社のデザインもアイデアに溢れており、LINEとまた違った雰囲気のサービスとデザインスタイルを見ることができで楽しかった。クリエイティブセンターがブースを出したらどんな雰囲気になるのか、想像しながら回っていた。
デザイナーの仕事あるあるみたいなテーマで参加者が書き込むボードを用意しているブースがいくつかあった。参加者との交流方法としてGOODアイデア。
小規模なプレゼンテーションやブース出展企業の目的はほとんどがリクルーティングで、自社のデザイナーの仕事を紹介するツールを展示しデザイン業務の魅力を伝えたりその場でスカウトしたりしていた。
展示ブース中央に展示されていた「目でも指でも読める文字 “Braille Neue”」という展示は面白かった。こういった新たな試みのような展示は、個人制作のような小規模なものでもたくさん見ることができればアイデアやデザインの参考になりそうだなと思った。
4.イベント全体について
このようにデザイナーが集まるイベントに参加して、違う視点を体感することは意味ある時間だと思った。
参加企業や登壇内容も様々だったが、散らかっているというよりは、それらがゆるくつながっていることを感じられた。
楽天ブースのツール。デザイナーの仕事がこの1枚のボードでわかりやすく表現されていた。
同じデザイナーでも業種が違う登壇者が多く、それぞれの視点がまったく違う専門の内容を聞くことができた。また、日本や世界の歴史的、文化的な部分から、ブランディングを行う際のプロセスや考え方にも取り入れているデザイナーさんが多いと感じた。このような部分にももっと目を向けると、発見できることが増えていき、今後のアウトプットにも活かしていきたいと思った。
最後に
クリエイティブセンターでは、こういったカンファレンスやミートアップ、勉強会への参加は、自身の見識や関係性を広げるのに大いに役立つと考えているため積極的な参加を支援しています。
これからも、メンバーの参加したイベントのレポートを公開していく予定ですので、お楽しみに!
デザインシップ事務局の皆様、素晴らしい会をありがとうございました!