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名前をデザインする

こんにちは、クリエティブ戦略チームのkennyです。
今回はUIでもBXでも映像でもない、「名前」のデザインについてです。

私事ですが昨年 第一子が誕生しまして、親になると同時に人生で初めて人の名前をつけるという経験をしましたので、私が自分たちの子の名前をどのように考えたのか、そのプロセスについてまとめました。
大前提として私自身はどのような名前も尊重しますし、どんな名付け方も否定しません。あくまで私が取った方法をご紹介するまでです。これから名付けをする誰かの参考になれば幸いです。

ちなみに妊娠期に関しては、男親は肉体的な変化や苦労がなく、できることと言えば妻の心身のケアと神頼みと生まれてくる子の名前を考えることくらい。しかし、この「名前を考える」ことがなかなか大変でして、今までさまざまなクリエイティブに携わってきましたが群を抜いて難しかったかもしれません。なんせクライアント兼ユーザーは物言わぬどころかまだこの世に誕生すらしていないのですから。

まずはリサーチ

まず取り掛かったのが”他者”事例の調査です。具体的には歴史上の人物の名前の由来を調べたり、身近な人の名前の由来を聞いたりというものです。身近な人の名前の由来を聞くというのがなかなか面白く、この時期はとにかくいろんな人に名前の由来を質問していた記憶があります。初対面の方との話のきっかけとしてもおすすめです。

多くの人の名前を調べる中で一つ決めたことがあります。それは「願いを込めない」というものです。親としては、こう育ってほしい、ああなってほしいという気持ちはあるものの、幼名の風習のない現代においては、基本的には一生涯使い続ける名前としてそれを子供に押し付けるのは親のエゴなのかもしれないということでやめることにしました。ここで一つ目の命名ルールができました。

コンセプトの策定

願いを込めないというルールと同時に、この新しく生まれてくる人を表現するためのコンセプトを決めました。願いではなく、この人はどういう存在なのかというのをとことん考えました。コンセプトはあくまで具体案を出す上での方向性づけのため、あえてひとつに絞らずいくつかのコンセプトを用意しました。

案出し(拡散)

そこからは、それぞれのコンセプトにもとづきひたすら案を出していきます。古典から言葉を拾ったり、漢字の成り立ちを調べたりしながら思いつくままに案を出し続けました。そうして気づきました。これは無限に考えられてしまうなと。
思えばこれまでのクリエイティブな仕事には必ず制約がありました。時期、時間、規模、対象、場所、予算等々。制約があるからこそいいアイデア、いいクリエイティブが生まれるといっても過言ではないと思います。 

制約(絞り込み)

というわけで、次に取り組んだことは制約の定義です。繰り返しますが、実際にこの名前を使う本人は何も言ってこないので制約も自ら定義しました。
先に決めた「願いを込めない」を含め全部で10個の制約をつくりました。
具体的にどんな制約を設けたのかを以下に記します。

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機能性と感性の命名十則

前半の5つは主に機能性に関するもので、名前はアイデンティティであるとともにさまざまな場面で「使用される」ものであるため使いやすさが大事です。

1. 呼びやすい
名前のもっとも原始的な機能は呼んでもらうことかと思いますが、そのためにまず呼びやすさを重視しました。
2. 覚えやすい
すぐに覚えてもらえる名前なら多くの人と距離を縮めやすいかもしれません。
3. 書きやすい
書きやすさは筆記試験や公的な資料の作成が楽になるでしょう。ちなみに私の本名は小林謙太郎ですが文字数も画数も多く苦労しました笑(とはいえこれはこれで気に入ってます!)
4. 読みやすい
読みやすさは誤読の防止や自己紹介時の負担軽減になります。
5. 変換しやすい
PCやスマホでの変換しやすさは現代では最も重要な要素のひとつではないでしょうか。

上記の機能性に関する5つの制約と対照的に、後半の5つは感性に関わる部分で、こちらは制約といっても主に私の好みを反映したものです。

6. 普遍的
百年前に生まれた人にとっても百年後の世の中でも日本でも海外でも自然と馴染むような、そんな名前になるといいなと思いました。
7. 名字との調和
名前は多くの場合、名字とセットで使われるため音や字面のバランスにも配慮しました。
8. 願いを込めない
これは先に記載した通りですが、親の想いや期待を過度に押し付けてしまわないようにという意味です。
9. あやからない
読者の皆さんは「あやかり名」というのをご存知でしょうか。歴史上や著名な人物にあやかってつける名前のことで、実は私自身あやかり名なのですがこれは私の経験からやめようと思いました。理由を話すと長くなるのですが、簡単にいうとあやかり元の評価が変わることがあるためです。似たような手法として親や親族から文字を継承するというものがありますが、これもやめました。理由は全方位的配慮が難しいと考えたためです。
10. またとない
最後の「またとない」については、ちょうど名前を考えていた時期に参加した日本デザインセンターの色部義昭さんの「またとないを楽しむ」という講演に影響されているのですが笑、生まれた年や季節など、その時ならではのものを込めることにしました。

プロトタイピング

これらのルールに基づいて数点に絞り込んだ名前に対して次に行ったことは、主に機能性やバランスの検証としてのプロトタイピングです。実際に声に出して呼んでみたり、敬称をつけたり、あだ名を考えたり、ボールペンで書き、筆で書き、名刺を作ってみたり。 

このように試行錯誤を繰り返しながら、10個の制約 命名十則とプロトタイピングを経てついにひとつの名前に辿り着くことができました。
苦労した甲斐もあってか、妻を含め親戚、同僚、友人誰もがとても親しみを持って我が子の名前をよく呼んでくれます。

最後に

繰り返しになりますが、どのような名前もどのような名付け方も否定しません。大事なのは生まれてくる子のことを一生懸命考えることだと思います。そういう意味では名前は男親が考えた方がいいのかなと思います。女親は嫌がおうにも妊娠期に常に子供の存在を感じ向き合う状況ができるわけなので、そこに少しでも追いつくためにも男親は名前を考えることで子供という存在と向きあえるのではないでしょうか。

いかがだったでしょうか。いつものCREATIVE CENTERの記事とは少し趣の異なる内容だったかもしれませんがお楽しみいただけたでしょうか。
今回は人名についてでしたが、プロダクトやプロジェクトの名前をつける際にも参考になる部分はあるかと思います。

おまけでひとつ仕事のハックをお教えしますと、厄介な業務や難解な仕事には簡単でいいのでユニークなコードネームやプロジェクト名をつけてみることです。その仕事の目的は、コアバリューは何か、そういったことが可視化できるとともに、仕事自体に愛着が湧いてきたりするものです。騙されたと思って試してみてください。

これからも仕事、プライベート問わず、常にものづくりを楽しんでいたいものです。

それではまた。

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